メガ損保3社(東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングス)が、2027年3月期 第1四半期(2026年4〜6月)の決算を発表しました。3社とも保険収益は二桁の増収で、利益の柱は国内から海外へと移りつつあります。一方で、2025年度の有価証券報告書を読むと、年収・女性管理職比率・転勤制度といった「働く側から見た数字」にも、はっきりとした差と変化が表れています。この記事では、3社の最新決算と有報をもとに、業界の現在地を整理します。
※本記事の数値は、各社が公表した決算短信・決算説明資料・有価証券報告書・プレスリリースに基づきます。会計基準は3社とも国際財務報告基準(IFRS)です。
2026年4〜6月期は3社そろって増収、利益の柱は海外へ
第1四半期の保険収益は、東京海上が2兆471億円(前年同期比12.3%増)、MS&ADが1兆6,861億円(同14.1%増)、SOMPOが1兆6,170億円(同28.0%増)でした。純利益は東京海上2,643億円(同3.3%増)、MS&AD3,286億円(同33.4%増)、SOMPO1,812億円(同52.8%増)です。
伸びをけん引したのは海外事業です。東京海上は修正純利益2,613億円のうち海外保険が1,643億円を占め、国内保険の988億円を上回りました。MS&ADの海外事業の修正利益は559億円から1,088億円へとほぼ倍増し、米州ではW.R.バークレー社の損益取り込みが寄与しています。SOMPOも海外保険の利益928億円が国内損害保険の704億円を上回りました。2026年2月に約5,400億円で買収を完了したアスペンの効果が加わっています。
国内損保は、自然災害と損害率の動向に左右される展開でした。2026年6月の台風6号の影響で、東京海上は国内の自然災害による正味発生保険金が147億円(税引前)、SOMPOは110億円(概算)を計上しています。
数字で比べる|業績・年収・従業員数
| 項目 | 東京海上 | MS&AD | SOMPO |
|---|---|---|---|
| 保険収益(2026年3月期) | 7兆6,936億円 | 6兆4,360億円 | 5兆3,729億円 |
| 当期利益(2026年3月期) | 5,313億円 | 5,106億円 | 6,401億円 |
| 1Q純利益(前年同期比) | 2,643億円(+3.3%) | 3,286億円(+33.4%) | 1,812億円(+52.8%) |
| 連結従業員数 | 67,526名 | 46,856名 | 55,702名 |
| 主力損保の平均年収 | 906万円(東京海上日動) | 814万円(三井住友海上) | 742万円(損保ジャパン) |
| 持株会社の平均年収 | 1,487万円 | 1,237万円 | 1,259万円 |
| 女性管理職比率(主力損保) | 30.5% | 26.3% | 14.1% |
| 年間配当(2027年3月期予想) | 245円 | 170円 | 200円 |
平均年収は東京海上日動が906万円で3社の中では最も高く、三井住友海上814万円、あいおいニッセイ同和損保758万円、損保ジャパン742万円と続きます。注目したいのは前年からの伸び率で、損保ジャパンが12.0%増、あいおいニッセイ同和損保が5.8%増と大きく動きました。東京海上日動は0.2%増、三井住友海上は0.3%増です。
なお、持株会社の平均年収が1,200万円台〜1,400万円台と高いのは、いずれも数百人規模で、子会社からの出向者が中心の組織だからです。実際に多くの社員が働くのは事業会社側であり、転職を検討する際は応募先の会社ごとの数字を見る必要があります。
「自分の場合はどうなのか」が気になった方へ。あなたの市場価値を無料で聞いてみる
東京海上ホールディングス|バークシャーが2,874億円を出資
- 1Q保険収益:2兆471億円(前年同期比12.3%増)
- 1Q純利益:2,643億円(同3.3%増)/修正純利益2,613億円(同3.6%減)
- 通期予想:純利益8,300億円、修正純利益9,500億円(1Q進捗28%)
- 平均年収:東京海上日動906万円(平均42.6歳)/持株会社1,487万円
- 連結従業員数:67,526名(うち海外24,213名)
- 直近トピックス:バークシャー・ハサウェイ子会社の出資、勤務地区分の廃止
2026年3月23日の取締役会で、バークシャー・ハサウェイの完全子会社であるナショナル・インデムニティとの包括的な戦略的パートナーシップを決議しました。内容は「当社への戦略的出資」「再保険分野での協働」「M&A等における戦略的提携」の3本柱です。第三者割当による自己株式の処分という形で、48,207,200株を1株5,962円、総額2,874億円で割り当て、2026年4月13日に払込が完了しました。持株比率は2.49%です。なお、議決権については当社取締役会の推奨に従って行使する契約が結ばれています。
働き方の面では、2026年4月の人事制度改定が大きな変化です。東京海上日動は「総合職」と「総合職(エリア限定)」という勤務地区分を廃止して一本化し、全員が「本拠地」を定めたうえで、毎年、転居転勤に同意するかどうかを申告する制度に切り替えました。有価証券報告書では、男女の賃金差(東京海上日動は男性を100として57.2%)の主因が勤務地区分と勤続年数にあると分析しており、制度改定はその是正も狙ったものです。女性管理職以上の比率は30.3%となり、2025年度までに30%という目標を達成しています。
MS&AD|2027年4月に三井住友海上とあいおいが合併
- 1Q保険収益:1兆6,861億円(前年同期比14.1%増)
- 1Q純利益:3,286億円(同33.4%増)/修正利益3,106億円(通期進捗38.8%)
- 通期予想:当期利益4,250億円(前期比16.8%減)
- 平均年収:三井住友海上814万円/あいおいニッセイ同和損保758万円/持株会社1,237万円
- 連結従業員数:46,856名(三井住友海上12,731名、あいおいニッセイ同和損保12,515名)
- 直近トピックス:2027年4月1日の合併、グループ商号の変更
2026年2月13日に合併契約を締結し、2027年4月1日に三井住友海上火災保険を存続会社としてあいおいニッセイ同和損害保険と合併します。新会社の商号は「三井住友海上あいおい損害保険株式会社」、持株会社も同日付で「三井住友海上グループ株式会社」へ変更される予定です。新会社の取締役は15名(うち社外7名)となります。
転職を考えるうえで見ておきたいのが、合併に伴うコスト削減の中身です。会社は2030年度までに1,500億円(2024年度対比)の削減を掲げ、内訳を人件費550億円、代理店手数料500億円、物件費等450億円と示しています。人件費については、2026年5月26日のIR説明会資料に「自然退職と採用抑制により順調に削減額が増加」「期間前半に早期退職支援制度の導入・運用を検討し、2027年度以降、削減ペースが加速」と明記されています。人数の目標は公表されていませんが、採用枠や配属に影響しうる論点です。
一方で、人的資本の開示は3社の中でも細かく、男性育児休業取得率104.8%(平均取得日数17.8日)、年次有給休暇取得日数17.4日、1人あたり研修時間92.7時間、自己都合離職率2.4%といった数字が並びます。あいおいニッセイ同和損保は2023年10月に「全域型」「地域型」の社員区分を統合し、2024年4月から運用を開始。三井住友海上も2025年度に、転居転勤がある社員とない社員の処遇差を縮小する制度改定を実施しています。
この記事の数字、あなたの場合はどうなるか。
同じ経歴でも、提示される条件は企業によって大きく変わります。各業界出身のアドバイザーが、非公開求人をもとに「あなたの場合」をお伝えします。
自分の市場価値を聞いてみる相談は無料/オンライン可/しつこい連絡はしません
SOMPOホールディングス|全社員に株式報酬、社名も変わる
- 1Q保険収益:1兆6,170億円(前年同期比28.0%増)
- 1Q純利益:1,812億円(同52.8%増)/修正連結利益1,197億円は第1四半期として過去最高
- 通期予想:当期利益4,900億円、修正連結利益5,000億円(1Q進捗24%)
- 平均年収:損保ジャパン742万円(前期比12.0%増)/持株会社1,259万円/SOMPOケア444万円
- 連結従業員数:55,702名(国内損保23,435名、介護13,511名、海外8,991名ほか)
- 直近トピックス:全社員向け株式報酬の導入、2027年4月の社名変更、海外M&A
2026年5月20日に、国内グループ30社以上・約48,000人の社員を対象とした株式給付信託(J-ESOP)の導入を発表しました。毎年一律20ポイント(導入時点で20株相当)を付与し、一定の勤続条件を満たしたときに株式で給付する仕組みで、株式取得資金として198.72億円を信託しています。会社は導入の目的として、グループの一体感の醸成に加えて「社員のファイナンシャル・ウェルビーイング」を挙げています。あわせて、2027年4月1日付で商号を「SOMPOグループ株式会社」に変更することも決議されました。
働き方では、損保ジャパンの総合系[全国コース]が、入社後に毎年、転居転勤の同意確認を行い、「全国」「ブロック」「本拠地勤務」から選ぶ仕組みになっています。採用サイトによると、初任給は勤務地が住居本拠地から通勤できない場合が大卒354,740円(転勤手当7万円を含む)、通勤できる場合が314,740円(転勤同意手当3万円を含む)です。キャリア採用には、原則として転居を伴う転勤がない地域限定の区分もあります。社内副業制度「SOMPOクエスト」では就業時間の2割を上限に他部署の業務に携わることができ、社内公募では2025年度に286名が異動しました(応募748名)。
なお、損保ジャパンは自動車保険金の不正請求等をめぐる行政処分を受けて業務改善計画に取り組んでおり、有価証券報告書には「組織目標からトップラインやマーケットシェア等の項目を除外」「顧客本位の業務運営の構築に資さない代理店出向の廃止」といった見直しが記載されています。
3社に共通する3つの論点
1.政策保有株式のゼロ化
東京海上は2029年度末に保有ゼロとする方針で、2025年度だけで7,456億円を削減し、第1四半期にも2,353億円を売却しました(売却益2,094億円)。MS&ADは2026年3月末の時価残高2兆2,654億円について、2026・2027年度で7割超を売却し、2029年度末に売却を完了する計画です。SOMPOは2030年度末を目処に残高ゼロとする計画で、中期経営計画の削減目標を2026年5月に9,700億円以上へ引き上げました。当面は売却益が利益と株主還元を押し上げますが、売り切った後の本業の収益力が次の焦点になります。
2.海外シフト
3社とも、海外保険事業が利益の中心になりつつあります。東京海上は海外の正味収入保険料が9,347億円(前年同期比16.6%増)、MS&ADはW.R.バークレー社やBarings社への出資を進め、SOMPOはアスペン買収で海外の運用資産が前年から約4割増えました。英語や海外拠点での実務経験、再保険・特殊保険(スペシャルティ)の知見は、採用市場でも評価されやすい領域といえます。
3.転勤制度の見直し
「全国転勤が当たり前」という前提が、3社とも崩れつつあります。東京海上日動は勤務地区分そのものを廃止して毎年の同意申告制へ、あいおいニッセイ同和損保は社員区分を統合、損保ジャパンは毎年の選択制と地域限定区分を用意しています。背景には、男女の賃金差の主因が「転勤の有無を前提とした社員区分」にあるという各社の分析があります。転居を伴う異動を受け入れるかどうかが、そのまま処遇に反映される設計になっている点は、応募前に確認しておきたいところです。
転職するかは、まだ決めていなくて大丈夫です。いまの相場と選択肢だけ聞いてみる
転職視点で見るポイント
- 年収は上昇局面だが、上げ幅に差がある:損保ジャパン12.0%増、あいおいニッセイ同和損保5.8%増に対し、東京海上日動0.2%増、三井住友海上0.3%増。水準と伸び率の両方を見る。
- MS&ADは採用抑制が明記されている:人件費550億円の削減手段として「自然退職と採用抑制」「早期退職支援制度の導入・運用の検討」が挙げられている。
- SOMPOは中途比率が高い:持株会社と損保ジャパンのキャリア採用比率は50.5%(306名)。ジョブ型の適用者は340名。
- 東京海上は制度が変わった直後:2026年4月の勤務地区分廃止により、働く場所の選び方が変わった。
- 子会社によって待遇は大きく違う:SOMPOケアの平均年収は444万円。同じグループでも事業会社ごとに水準は異なる。
なお、従業員持株会の奨励金率や住宅補助・社宅の自己負担額については、3社とも有価証券報告書や決算資料では確認できませんでした。損保ジャパンは採用サイトで社宅制度・従業員持株会・社内融資制度の存在を明示していますが、金額や率までは公開されていません。実際の手取りや生活コストに直結する部分なので、選考の過程で確認することをおすすめします。
まとめ
2026年4〜6月期のメガ損保3社は、海外事業と資産運用の好調を背景に、そろって増収となりました。ただし、業界としては「政策保有株式の売却」「海外へのシフト」「転勤前提の人事制度の見直し」という3つの構造変化の途中にあります。MS&ADは2027年4月の合併、SOMPOは社名変更と全社員向けの株式報酬、東京海上はバークシャーとの提携と、3社それぞれに大きな節目が重なっているのが2026年です。
損保業界は、会社ごとに年収水準も、転勤の扱いも、採用の方針も違います。どの会社のどの職種が自分に合うのかは、公開情報だけでは判断が難しい部分もあります。業界の動きを踏まえたうえでキャリアを考えたい方は、実際に各社の選考状況を把握しているエージェントに相談してみてください。
【出典】東京海上ホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信・決算説明資料」(2026年8月12日)、「有価証券報告書 第24期」、「Human Capital Report 2026」/MS&ADインシュアランスグループホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信・決算電話会議資料」(2026年8月14日)、「有価証券報告書 第18期」、「IR説明会資料」(2026年5月26日)、合併に関する各プレスリリース/SOMPOホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信・決算説明資料」(2026年8月14日)、「有価証券報告書 第16期」、「統合レポート2026」、各プレスリリース、損害保険ジャパン採用サイト
数字の裏側まで、プロと一緒に読み解く。
記事では見えない「実際の提示年収」「配属後の働き方」「いまの採用の動き」まで。コンサル・M&A・IT・金融など、各業界出身のアドバイザーが無料でお答えします。
無料でキャリア相談を申し込む- 相談は完全無料
- 非公開求人からご提案
- 各業界出身のプロが担当


