「ITコンサルは年収が高い」とよく言われますが、実際のところ各社でどれくらい違うのか——本記事では、上場していて有価証券報告書(有報)を開示している日系ITコンサル/テクノロジーファーム7社を、有報の一次データだけで横並びに比較しました。見るのは「業績の伸び」「平均年収」「働きやすさ(女性管理職比率・男性育休取得率・男女賃金差異)」「勤続年数・平均年齢」の4つの切り口です。あわせて、有報を出していない注目の非上場2社(アビーム/Dirbato)も参考として取り上げます。
比較の前に|数字を読むときの3つの前提
- 持株会社に注意:ベイカレント・シンプレクス・フューチャー・ULSは持株会社体制です。有報の「提出会社(単体)」は持株会社の少人数データになるため、本記事では実態に近い事業会社の数値を採用しています。
- 会計基準の違い:NRI・ベイカレント・シンプレクスはIFRS採用で「経常利益」がなく、税引前利益で見ます。
- 決算月がバラバラ:各社の最新の有報(直近1期)を基準にしています。平均年収などは「提出会社ベース」で、賞与・基準外賃金を含みます。
① 業績の伸び|5期でどれだけ伸びたか
| 会社 | 最新期 | 売上高 | 5期前 | 伸び |
|---|---|---|---|---|
| NRI | 2026/3 | 8,147億円 | 6,116億円 | 約1.3倍 |
| ベイカレント | 2026/2 | 1,483億円 | 576億円 | 約2.6倍 |
| フューチャー | 2025/12 | 760億円 | 487億円 | 約1.6倍 |
| シンプレクス | 2026/3 | 587億円 | 306億円 | 約1.9倍 |
| ノースサンド | 2026/1 | 262億円 | 24億円 | 約11倍 |
| ULS | 2026/3 | 166億円 | 74億円 | 約2.3倍 |
| ブレインパッド | 2025/6 | 118億円 | 71億円 | 約1.7倍 |
規模ではNRIが8,000億円超と別格ですが、これはシンクタンク・大規模ITサービスを含む数字で、コンサルティングは事業の一部です。「純粋な成長スピード」で目立つのは、5期で売上を2.6倍にしたベイカレントと、24億円から262億円へ約11倍に急拡大したノースサンド(※起点が小さい点は割り引いて見る必要があります)。中堅ではULSが14期連続の最高益更新と、着実な右肩上がりを続けています。
② 平均年収|1,300万円台と700万円台の間にある「幅」
| 会社 | 平均年収 | 平均年齢 | 勤続年数 | 年収の母集団 |
|---|---|---|---|---|
| NRI | 1,333万円 | 39.7歳 | 13.7年 | 提出会社(本体) |
| ベイカレント | 1,331万円 | 31.3歳 | 3.8年 | 提出会社 |
| ULS | 1,006万円 | 40.1歳 | 5.7年 | ULSコンサルティング |
| シンプレクス | 986万円 | 31.2歳 | 4.8年 | シンプレクス(株) |
| フューチャー | 843万円 | 33.8歳 | 6.2年 | フューチャーアーキテクト |
| ブレインパッド | 761万円 | 35.2歳 | 4.1年 | 単体(本体) |
| ノースサンド | 689万円 | 32.1歳 | 1.8年 | 単体 |
トップはNRIとベイカレントの約1,330万円。ただし中身は対照的で、NRIは平均年齢39.7歳・勤続13.7年とベテランが積み上げた高年収、ベイカレントは平均31.3歳・勤続3.8年と若くして高年収に到達しています。シンプレクスも31歳で986万円と、若手の水準が高いのが金融特化ファームの特徴です。一方、平均年収689万円のノースサンドは平均31歳・勤続1.8年で、これから年収カーブが立ち上がっていくフェーズと読めます。
③ 働きやすさ|女性管理職・男性育休・男女賃金差異
2023年以降、有報では「女性管理職比率」「男性育休取得率」「男女賃金差異」の開示が求められるようになりました。男女賃金差異は女性の賃金が男性の何%かを示す指標で、100%に近いほど格差が小さいことを意味します。
| 会社 | 女性管理職比率 | 男性育休取得率 | 男女賃金差異(全労働者) |
|---|---|---|---|
| NRI | 11.7% | 90.9% | 73.1% |
| ベイカレント | 2.0% | 91.0% | 76.5% |
| ULS | 11.5% | 72.7% | 81.4% |
| シンプレクス | 7.9% | 55.4% | 81.1% |
| フューチャー | 11.3% | 89.7% | 75.5% |
| ブレインパッド | 12.4% | 83.3% | 78.0% |
| ノースサンド | 9.6% | 50.0% | 73.3% |
男性育休取得率はNRI・ベイカレント・フューチャーが90%前後と高く、大手ほど制度が定着している傾向が見えます。女性管理職比率はブレインパッド12.4%が最も高い一方、急拡大中のベイカレントは2.0%と低め。これは「増えた総合職に対し管理職層への登用がこれから」という成長企業特有の構図で、各社とも「同一等級での男女賃金差はなく、差異の主因は等級・年齢構成の偏り」と説明しています。数字の高低だけでなく、その背景まで見て判断したいところです。
④ 勤続年数・平均年齢|「定着型」か「若手急拡大型」か
勤続年数の長さは、そのまま社風の違いに表れます。NRI(13.7年)・ULS(5.7年)は落ち着いた定着型。対して、ベイカレント(3.8年)・シンプレクス(4.8年)・ノースサンド(1.8年)は平均年齢も30代前半で、若手が主力の急拡大型です。「腰を据えて専門性を深める」か「若いうちに裁量とスピードを取りに行く」か——年収の数字だけでなく、この軸で自分に合う環境を選ぶのが失敗しないコツです。
各社プロフィール|有報で見る7社
▼ 野村総合研究所(NRI)
- 最新売上:8,147億円(2026年3月期・連結)
- 5期の伸び:約1.3倍
- 平均年収:1,333万円(提出会社)
- 平均年齢/勤続:39.7歳/13.7年
- 女性管理職/男性育休:11.7%/90.9%
- 従業員数:16,894名(連結)
- ひとこと:シンクタンク+ITの最大手・定着型
日系シンクタンクの雄。コンサルティングから金融IT、産業IT、ITインフラまでを一気通貫で手がける総合力が強みで、売上規模は他を圧倒します。平均勤続13.7年・男性育休90.9%と、腰を据えて働ける環境が整っているのが特徴です。
なお2026年3月期は、豪州・北米子会社の減損(合計約979億円)を計上した影響で最終利益が前期の938億円から153億円へ大きく減少しました。これは一時的な要因で、恒常ベースの事業利益は約1,566億円。増収基調そのものは続いています。
引用:NRI 有価証券報告書(2026年3月期・IRBANK)/有報PDF
▼ ベイカレント
- 最新売上:1,483億円(2026年2月期・連結)
- 5期の伸び:約2.6倍
- 平均年収:1,331万円(提出会社)
- 平均年齢/勤続:31.3歳/3.8年
- 女性管理職/男性育休:2.0%/91.0%(事業会社)
- 従業員数:6,788名(連結)
- ひとこと:日系デジタルの成長株・若くして高年収
ワンプール制(業界・領域を固定しない)で知られる日系総合コンサルの成長株。5期で売上2.6倍、営業利益率は30%超と、収益性の高さが際立ちます。平均31歳・勤続3.8年ながら平均年収1,331万円と、若くして高い報酬に届くのが最大の魅力です。
一方で、女性管理職比率が事業会社ベースで2.0%と低いのは、急拡大で増えたコンサルタントに対し管理職登用が追いついていない成長企業ならではの構図。スピード感のある環境で早く裁量を得たい人に向くファームです。
引用:ベイカレント 有価証券報告書(2026年2月期・EDINET)/IRBANK
▼ フューチャー
- 最新売上:760億円(2025年12月期・連結)
- 5期の伸び:約1.6倍
- 平均年収:843万円(フューチャーアーキテクト)
- 平均年齢/勤続:33.8歳/6.2年
- 女性管理職/男性育休:11.3%/89.7%
- 従業員数:3,624名(連結)
- ひとこと:技術力ベースの上流〜実装ITコンサル
「ITコンサルティング&サービス」を掲げ、戦略・構想から設計・実装・運用までを技術力で一気通貫に支援する老舗。持株会社体制で、中核事業会社はフューチャーアーキテクト。男性育休89.7%と働きやすさの指標も高水準です。
売上・利益ともに堅調な右肩上がりで、地に足のついた成長を続けているのが特徴。派手さより「技術で解く」カルチャーに共感できるエンジニア/コンサル志向の人にフィットします。
引用:フューチャー 有価証券報告書(2025年12月期・EDINET)/IRBANK
▼ シンプレクス
- 最新売上:587億円(2026年3月期・連結)
- 5期の伸び:約1.9倍
- 平均年収:986万円(シンプレクス株式会社)
- 平均年齢/勤続:31.2歳/4.8年
- 女性管理職/男性育休:7.9%/55.4%(連結)
- 採用数:新卒233名/中途257名(2026年3月期)
- ひとこと:金融特化のテクノロジーファーム・若手高給
証券・銀行など金融領域に強いテクノロジーファーム。フロント〜バックのシステムを自ら作り切る「テクノロジー×金融ドメイン」が武器で、営業利益率24.6%・ROE21.0%と高い収益性を誇ります。平均31歳で986万円と、若手の報酬水準が高いのが特徴です。
採用にも積極的で、有報でも新卒233名・中途257名(2026年3月期)と開示。実力主義でスピード感のある環境を求める人に向きます。
引用:シンプレクス・ホールディングス 有価証券報告書(2026年3月期・EDINET PDF)/IRBANK
▼ ノースサンド
- 最新売上:262億円(2026年1月期・単体)
- 5期の伸び:約11倍(起点24億円)
- 平均年収:689万円(単体)
- 平均年齢/勤続:32.1歳/1.8年
- 女性管理職/男性育休:9.6%/50.0%
- 従業員数:1,762名
- ひとこと:2025年11月上場の急成長ブティック
2025年11月に東証グロースへ上場したばかりの新興ファーム。売上は5期で24億円から262億円へと約11倍に急拡大し、当期純利益も40億円規模に到達しました。平均年齢32歳・勤続1.8年という数字が、若く勢いのある組織であることを物語ります。
上場初年度で有報は今回が初回のため、人的資本指標(女性管理職比率・男性育休取得率など)は今後の推移を見守る段階。伸びしろの大きい環境で成長したい人にとっては注目の一社です。
引用:ノースサンド 有価証券報告書(2026年1月期・日経会社情報)/IRBANK
▼ ULSグループ(ウルシステムズ)
- 最新売上:166億円(2026年3月期・連結)
- 5期の伸び:約2.3倍
- 平均年収:1,006万円(ULSコンサルティング)
- 平均年齢/勤続:40.1歳/5.7年
- 女性管理職/男性育休:11.5%/72.7%(事業会社)
- 従業員数:820名(連結)・離職率7.4%
- ひとこと:技術特化の少数精鋭・ベテラン型
上流のIT戦略から実装までを技術力で支援する少数精鋭ファーム。売上166億円と規模は大きくないものの、営業利益・経常利益は14期連続で過去最高を更新するなど、収益性と継続成長が光ります。中核のULSコンサルティングは平均年収1,006万円と高水準です。
平均40歳・勤続5.7年、離職率7.4%と、経験を積んだプロフェッショナルが腰を据えて働く環境。技術的な深さを追求したいシニア層に向いた一社です。
引用:ULSグループ 有価証券報告書(2026年3月期・有報PDF)/IRBANK
▼ ブレインパッド
- 最新売上:118億円(2025年6月期・連結)
- 5期の伸び:約1.7倍
- 平均年収:761万円(単体)
- 平均年齢/勤続:35.2歳/4.1年
- 女性管理職/男性育休:12.4%/83.3%
- 従業員数:589名(連結)
- ひとこと:データ/AI・DXの草分け
2004年創業、日本のデータ活用・AIビジネスの草分け的存在。データサイエンスとエンジニアリングを掛け合わせ、DX・アナリティクス領域で存在感を放ちます。女性管理職比率12.4%は今回の7社で最も高く、多様性の面でも先行しています。
なお同社は、富士通による株式公開買付け(TOB)を経て上場廃止となる予定と報じられています(資本関係が変動中)。転職を検討する際は、最新の資本・組織状況をあわせて確認することをおすすめします。
引用:ブレインパッド 有価証券報告書(2025年6月期・IRBANK)
参考|有報を出していない注目ファーム2社
以下の2社は非上場で有価証券報告書がないため、数値は会社公表値・就職四季報・口コミベースが混在します。信頼度が異なる点に留意し、参考としてご覧ください(年収などは幅・目安です)。
▼ アビームコンサルティング(参考・非上場)
- 売上高:1,598億円(会社公表・FY2025)
- 従業員数:9,623名(連結)
- 平均年収:750〜850万円(口コミ目安・要確認)
- 女性比率/男性育休:28.0%/79.0%(公式)
- 採用数:350名(2025年)
- ひとこと:NEC傘下の大手総合ファーム
1981年設立、NEC(日本電気)の完全子会社。SAPをはじめとするERP導入やDXを軸に、売上を4年で991億円から1,598億円へと拡大してきました。「Real Partner」を掲げ、現場に入り込む伴走型のスタイルで知られます。非上場のため年収などの公式開示は限られますが、規模・人員・海外展開ともに国内総合系の中で存在感の大きいファームです。
▼ Dirbato(ディルバート/参考・非上場)
- 売上高:約505億円(会社公表・要確認)
- 従業員数:約1,445名(媒体ベース・要確認)
- 平均年収:700〜900万円(口コミ目安・要確認)
- 平均年齢:約35.8歳(媒体ベース・要確認)
- 設立:2018年
- ひとこと:業界最速クラスで伸びるテックコンサル
2018年設立、創業わずか数年で売上500億円規模へと急拡大した日本発のテック/インキュベーション・コンサル。ITの企画立案から現場実装までを一気通貫で支援し、年率20%超の高成長が特徴です。非上場かつ設立が新しいため公式の定量開示は限られ、多くの人事データは口コミ・媒体ベースにとどまります(数値は要確認)。勢いのあるベンチャー環境を求める人に注目される一社です。
まとめ|数字は「高さ」より「背景」で読む
同じ「ITコンサル」でも、NRIのような定着型の大手から、ベイカレント・シンプレクスのような若手高給の成長企業、ノースサンドのような新興急成長まで、その中身は大きく異なります。年収の高さだけを見るのではなく、「どのフェーズの会社で」「どんな働き方が待っているか」を、勤続年数や育休取得率といった数字の背景まで含めて読み解くことが、後悔のない転職につながります。
※本記事の数値は、各社の最新の有価証券報告書等の公表資料に基づいて作成しています(2026年7月時点)。参考2社(アビーム・Dirbato)は非上場のため、一部に口コミ・媒体ベースの目安値を含みます。最新かつ正確な情報は、必ず各社の一次資料をご確認ください。

